- 〈ジェラートサンタ〉の誕生と歩み
-
創業は1986年。飲食とは無縁な仕事をしていた父が、何かもうひとつ商売をやりたい…と模索した結果、当時まだ日本に未上陸の「ジェラート」に目をつけました。父は、同じくジェラートに興味を示していたメーカーの方々とともに本場イタリアに渡って技術を学び、帰国後、ジェラート専門店の草分けとして開業しました。
僕が店を手伝い始めたのは、大学を出てサラリーマン4年目でした。創業から20年以上経っていましたが、その当時はホテルや料理店などへの卸しが大半で、経営的にも不安定。父は「もうやめる」と言い出したんです。でも、いざそう言われると、それはちょっともったいない…と思えてきて「それなら俺がやってみる」と継ぎました。…とはいえ不器用な男同士でしょう。まず仕事を覚えたいのに、親父は黙って作業するだけで何も教えてくれない。こっちも聞き方がヘタだから、ちょっと話せばすぐけんかですよ。でも、その後コンテストで入賞したり、少しずつ事業も広がりはじめ、ちょっとずつ息子のことも認めてくれたんでしょうね、今は一切を任せてくれています。
- おいしさの支えは地元の食材
-
店を継いでまず手がけたのが「地産地消」でした。素材を探しに渥美半島、東三河と農家さんを訪ねましたが、はじめはほぼ相手にされなくて、「それなら自分で育てろ」とメロンの苗木を渡されたこともあったり(笑)
でも、一歩ずつご縁をつないでいった結果、「渥美半島の食材に特化したジェラート」として道の駅などに置かせてもらえるようになりました。そこで改めて気づきましたが、父はすでに、ほとんど地元食材でやっていたんです。
大葉、うずら、お茶、くだものや野菜…東三河は“食材王国”と言われますが、この辺りは本当においしいものが多くて素材に事欠かないんです。
「HANABI」で使用している「ほおずき」(ほおずきトマト)も、当初は地元の農家さんが畑の一角で栽培していたものの、ロスが多いのでどうにかできないか、と相談されたのが開発のきっかけでした。1~3月限定の「菜の花」なんて未だに自分で摘みに行きます。面白いところでは、しらす屋さんの依頼で商品開発した「しらすジェラート」。受注先限定なので当店では食べられませんが、しらすのインパクト十分、海の味がします。ジェラートはどんな食材からでも作れます。まだまだこの土地ならではの味わいを発掘してみたいですね。