DirTitle
店舗検索
ARCHIVES

Recommendサーラのおすすめ

《2019春夏保存版》
サーラのおすすめ

Interview《巻頭特集》匠インタビュー

「サーラのおすすめ」巻頭特集である、匠インタビューをご紹介いたします。

野菜が息づく
やさしいソース

日本に調味料の「ソース」が登場したのは明治期。英国の都市、ウスターを発祥とする「ウスターソース」がその初めです。最初は、大手の醤油メーカーなどが見よう見まねで製造していたものが、洋食文化が根付くにつれて本格的な「ウスターソース」として広まり、大正に入ると全国各地にソースメーカーが登場。各地域の食文化や味覚に合ったソースが開発されていくようになりました。こちらの〈トリイソース〉もそのひとつ。大正13年、浜松市中区相生町にて創業より約 95年。3代目となる鳥居大資さんにお話をうかがいました。

生野菜をまるごと使う

うちのソースの第一の特長は、生野菜から作るということですね。そのこだわりの一番の理由は「風味」です。現在、一般的に量販されているソースは、野菜のペーストやパウダーが使われています。原料を長期保存できて常に品質・味が安定するということが利点なのですが、特に「品質の安定性」というのは、食品においては非常に重要なんですね。

でも実は、パウダーやペーストは加工段階からすでに何度にも加熱されることで、繊細な風味は飛んでしまうんです。うちのソースは祖父の頃からのレシピで、当時の工場設備からいえば必然的なアナログな方法だったんですが、これって加熱のプロセスは最小限。結果的には理にかなっていたというわけです。とはいえ、生野菜を使うのは確かにリスキーです。厳密に調べたら、うちのソースは季節によって味が違っているかもしれません。でも、たとえ味が違っていたとしても、その理由がきちんとわかれば消費者の方は理解してくださる。特に、ナチュラル嗜好の現代では受け入れられやすいのでは、とも感じています。「周回遅れが先頭をとる」的な感覚でしょうか。

自家醸造酢と木桶が味のかなめ

数ある原材料のなかでも「酢」は、味としても防腐剤としてもウスターソースのキメ手だと思います。この酸味が抜けてしまったら味的には腰砕けですし、長期にわたって常温の木桶で寝かせておいてもソースが腐らないのはお酢がベースだからです。地元酒蔵の吟醸酒粕を使い、日々、発酵の状態を私たち自身で確かめながら自家醸造しています。

また、ウスターソースを寝かす「木桶」は、もっとも古いものは創業の頃、祖父が酒蔵から譲ってもらったもので約 95年目、今でも使えますよ。何年、何十年使ってきた木桶で熟成することで、ステンレスやプラスチックなどではできないまろやかさが生まれ、素材や季節による味のばらつきも慣らされていきます。ここでできあがったウスターソースが、中濃ソースなど、定番ソースのベースになっていきます。

オムライスソースと山椒ソース

僕が家業を継いだ当初、レシピは先代からのものだけでした。そこで、トリイの名前を知ってもらえるような、新たな商品がほしいと思って開発したのが「オムライスソース」です。家庭料理のアンケートを実施したら『オムライスは好きだけどケチャップの酸味はきらい』という意見があって。コレ、いけるかも…と。発売して約 10年、メディアでも扱ってもらい、素材も味も安心して小さな子どもに食べさせられるものになりました。食を扱う者として、これからはジャンクではないものを世の中に提案し、次の世代につなげるという使命を改めて感じましたね。

また、「山椒ソース」は、数年前に地元の山椒農家さんからの依頼が開発のきっかけです。とはいえ、山椒の最大の特徴であるあの香りは、水と熱に弱いという弱点があるので、最初はかなり躊躇しました。それでもとりあえず、と作ってみたら、なんとファンがついてしまって。そこで改めて、工場をあげて香りを残す工夫に取り組んだ改良品がこちらです。おなじみの香りやしびれ感というよりも、さわやかな柑橘系のスパイス的な感じで山椒が生きています。とんかつやうなぎの天ぷらなど脂がのった揚げものに良く合いますよ。

ソースの意外な使い方は?

最近、わが家でやってみて成功したのは【グラタン × 中濃ソース】です。ホワイトソースに最初から中濃ソースを入れると、加熱することで酸味が抜けてスパイスがきいた味わいになりますよ。子どもに好評なのは【味つけたまご】ですね。うずらの水煮をウスターソースに1時間ほど浸けるだけです。あとは【唐揚げ】。下味として1時間ほど漬け込むと、ソース風味のやわらかい唐揚げができます。

また、面白いところでは、地元のフレンチシェフが教えてくれた【お雑煮の隠し味】。これ、やってみたら確かにおいしいんです。かけ過ぎには要注意ですけど(笑)でも、この隠し味に使える、素材の味を邪魔しない「調味料としてのソース」というのは、実際に僕の目指すところのひとつでもあるんです。

子どもの頃、わが家の食事は、刺身以外はほとんどがソース味でした。それもかけるものではなく、コロッケとかでも、どんぶりのソースに浸して食べる感じ…ソースが嫌いになったこともありました。そんな思いもどこかにあるのかもしれませんね。

最新刊を見る

ARCHIVESアーカイブ一覧

ご来店、お客さま宅などへの訪問のご予約が簡単にできます!
\そうだ!サーラに聞いてみよう/
事前のご予約がオススメです
まずは郵便番号
お近くの店舗カンタン検索 訪問・来店予約
暮らしのサーラ公式YouTubeチャンネルはこちら サーラのおすすめ
まずは郵便番号
お近くの店舗カンタン検索 訪問・来店予約