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《2021秋冬保存版》
サーラのおすすめ

Interview《巻頭特集》匠インタビュー

「サーラのおすすめ」巻頭特集である、匠インタビューをご紹介いたします。

誰にもやさしい
未来を創り出す
久遠チョコレート

「仕方ない」を取り払えば、人や未来の可能性はすべて未知数になる。モノの考え方や見方を、もっとシンプルにして、お互いの凸凹を認め合うことで生まれる、たくさんの人々のよろこびが詰まった、色とりどりのチョコレート。

都市計画がパン屋になった

〈久遠チョコレート〉の前身はパン屋。大学は理系出身で都市計画を専攻していた夏目氏が、突然、経験ゼロのパン作りに舵を切ったのは、「仕方ない」というキーワード。

居場所ではなく「働ける場所」を

僕は大学の土木工学の分野出身で都市計画とか駅のバリアフリー化などについて学んでいました。そこで、障がい者の方々とディスカッションするという機会があり、そこで初めて、障がいを持つ方々が社会で生活していく大変さを知りました。

卒業後は就職して都市計画の仕事をしていたのですが、ちょうど「交通バリアフリー法」が施行された時期で、当時はまだ、使う人がいないものを作っても意味がないとか、理想はわかるけど資金がないから仕方ない…という返事が返ってくる。この「仕方ない」が、以前、福祉施設で聞いた答えとリンクしたんです。「障がい者」という属性がついたとたん、働く場所はほぼなし、福祉施設で働いても収入は月1万円未満…でも、障がいが重いから仕方ない。受け入れる以外に選択肢がないということばでした。同時にこれで人生のスイッチが入りました。物事を「仕方ない」で片付けていたら社会も自分も変わらない。僕は障がいのある方々の居場所ではなく「働ける場所」を作ろう!と。

パン屋が教えてくれたこと

初の起業にパン工房を選んだのは、パンは毎日食べるものだからという理由です。でも、その時点ではパン作りの知識はもちろん、商売経験もゼロでした。そこで、まず事業計画書を作って「会社四季報」にのっている企業を片っ端から訪ねました。…今思えば、若かったですね(笑)。ほとんどが門前払い。そんな中、地元の「敷島製パン」(パスコ)さんが、実際は難しいだろうがその情熱には心動かされたと、閉店店舗にあった機材を無償で貸してくださり、さらに職人のOBの方も派遣してくださった。それを機に銀行の融資も取り付け、ついに1号店の開業に到りました。

開店時には3名の障がい者を雇用しました。もちろん、最初はパンを作るのもレジを打つのもすべてマンツーマン。ちょっとでも目を離せば、パンは焦げているし、醗酵も失敗、レジでも騒ぎが起きている…。とはいえ、障がい者の給与改善を大命題として掲げているから、どれほど非効率であっても先に進むしかないんです。開店と同時に大赤字で、崖から転がり落ちるどころか、崖から直下でしたね。

ところが、そんなある日、レジ担当の女性がお給料でノートとペンを買ってきたんです。それに毎日、懸命に何かを書いているので聞いてみると、パンの名前と値段を書いて覚えているというんですね。彼女は計算ができないので、お客さまがレジに来ると、恐怖でパニックを起こしていたんですが、パンの名前と値段を打ち込めばレジスターが計算してくれることは理解できたから、それさえ覚えればいいんだ!と文房具店に向かったんです。その頃には、毎日のように焦げていたパンもきれいに焼きあがることが多くなっていました。「できないこと」の範囲は、人や周囲が勝手に決めつけているだけで、どれだけ信じて待つかで、人の可能性って広がるって実感した瞬間でした。

チョコレートは科学?!
「今」につながる運命の出会い

以前の僕は、チョコレートと生ケーキは素人には難しいから、絶対に手を出さない…と決めていました。ところが、野口和男との出会いで先入観は吹き飛びました。彼はもとはお菓子の機械職人で、40代でショコラティエになったという経歴の持ち主。個人のブランドは持たず、さまざまなホテルやブランドのオーダーに沿ったオリジナル商品を手がけています。そんな彼に、ある異業種交流会で「チョコレート作りは科学。素材をよく知り、正しい材料を正しい工程にのせれば、誰だって旨いチョコレートができる。チョコレートを目の前にして嫌な顔するは人いない…だれでも笑顔の作り手になれるんだ」と言われたんです。お互いにベースは理系、かつ人間的な情熱も感じる…何かが共鳴した、これこそ運命の出会いでした。

さっそく、東京の野口のラボを訪ねてみると、さらに目から鱗ですよ。そこは隣が日本語学校だったので、さまざまな国籍の方が休みを使って働きに来て、名だたるホテルや有名ブランドのチョコレートを作っているんです。しかも、基本的な作業は、溶かして固めるとことの繰り返し。これならうちでもやれる!と思いましたね。

実は、パンというのは食パン、惣菜パン、ハード系パンなど、すべてオペレーションが違うので、その種類と数を毎朝同じ時間に焼きあげるためには、その動線についてこられない人は外すしか方法がない…そこにはずっと悶々としていましたから。チョコレートなら基本的なオペレーションはすべて同様。失敗しても溶かして作り直せて、保存も効く。こちらに時間を合わせてくれるんです。

「久遠チョコレート」がめざすこと

「久遠(くおん)」とは、時が限りなく続いていく、遠い未来などを意味する古語。この国では障害があると働きづらいとか、給料が1万円とか…そんなことは過去の課題にしたい。たとえ失敗しても再びトライできる、そんな社会にしたいという思いを込めたブランド名だという。

思いのすべてが詰まった「テリーヌ」

うちの顔でもある「テリーヌ」は、季節的に店頭に出ていないものも含めて150種類以上。30カ国ぐらいのカカオを使っています。うちの商品が、あえて常温保存できるものが主流なのは、原料のカカオの風味や味わいをダイレクトに伝えていきたいからです。カカオって生産された国、年、収穫後の醗酵状態などによって驚くほど風味が異なる、まさにワインですよ。南米はコロンビア、アジアならベトナムあたりを多く使っていますが、南米は荒々しく、アジアはフルーティ、という個性がある。こんなに多様なカカオの奥深さを、ぜひ楽しんで味わっていただきたいんです。同じ日本の食材でもカカオを変えてみるだけで味わいが変わります。だからあえてアイテム数を絞り込まず、バリエーション豊かにずらっと並べて、そのなかで自分に合う味わいを自由に探してほしいですね。

これは企業秘密ですが、「テリーヌ」は、普通のお菓子作りでは絶対にやらない工程をあえて施して作ります。それは実に野口らしいアイディアで、素材の本質を理解しているから、ここまでは大丈夫という科学的な根拠があるんです。これこそが「テリーヌ」の独特な食感のヒミツです。

フィナンシェではない「QUONcire(久遠シェ)」

旭川にお店を出したときに、「興部(おこっぺ)町のバター」という発酵バターに出会って、なんだこれは!と思うほどおいしかったんです。野口に相談したら、すぐにフランスから伝統的な金型を取り寄せてくれて、小麦粉っていうのは強くしっかり火を通すことで風味が出るからと、カリカリでしっかり火を通したフィナンシェに仕上げました。そこにテリーヌと連動したチョコレートとトッピングで仕上げています。バター、道具、焼き方と、すべてにこだわりが詰まったフィナンシェ…ではなく「QUONcire」です。

SDGs内閣官房長官賞を受賞

2018年、〈久遠チョコレート〉は、第2回ジャパンSDGsアワードにて、SDGs の5つの項目(すべての人に健康と福祉を/ジェンダー平等を実現しよう/働きがいも経済成長も/人や国の不平等をなくそう/パートナーシップで目標を達成しよう)への取組を評価され、内閣官房長官賞を受賞。

SDGsは、あとからついてきた結果

全員でもがいたりぶつかったりしながらやってきたことが、結果的にこういう形で評価をされただけなんです。とはいえ、ありがたいですし、もちろん、トップを取る、一流ブランドになろうという想いもあります。久遠が知られることで、社会が何かに気づくとか、変化するかもしれないじゃないですか。

お菓子の素人からスタートした凸凹いっぱいの会社ですが、人も経営もいろんな意味でいい土壌ができているな、と思っています。やりたいことの軸はぶれません。企業としての情熱も年々高まっていく感じがしています。しんどい時期や判断も山ほどありますが、結局はその過程も含めて楽しい。本当に「しあわせだなぁ」と思います。

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