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《2020春夏保存版》
サーラのおすすめ

Interview《巻頭特集》匠インタビュー

「サーラのおすすめ」巻頭特集である、匠インタビューをご紹介いたします。

愚直な仕事が作りだす
口のなかで“踊る”食感

三河安城における製麺の歴史を教えてください。

「和泉手延べ麺」のはじまりは、口承の記録によれば江戸時代、天明の飢饉の頃と伝えられています。当時この辺りは和泉村と呼ばれ、船着き場があり、各地の船がここから油ヶ淵を通って知多半島へ出て貿易をしていました。つまり、さまざまな人や文化がもたらされたんですね。飢饉に困窮した農家が、荒地でも育つ小麦の栽培と手延べの技術を修得したのが最初といわれています。

〈たつみ麺店〉創業の経緯とは?

うちの祖先は平家の落武者の家で、この和泉の地に住みつくと、神本家十一軒屋敷という部落を作って農家を始めたと聞いています。第二次世界大戦までは製麺と農家を兼業していたそうです。当社初代である父は昭和50年に専業の製麺店〈たつみ麺店〉を創業しました。

当時、私は小学生でしたが、父の記憶といえば「どこでもしょっちゅう寝てしまう人」でしたね。その頃は作れば作るだけ売れる時代…今思えば、朝3時から夜遅くまで仕事していて、寝る隙などなかったんですよね。例えば、麺を天日干しするために作業場を往復する途中、立ったまま寝ているとか、晩ごはんの茶碗と箸を持ったまま寝ていたりしたのも覚えています。多い時代には 70 軒ほどあった製麺店も、現在では10軒弱になってしまいました。

そんなお父さまの背中をみて家業を継ぐことに?

いえいえ、当時私は電子機器部品の会社でサラリーマンをしていました。それこそ、製麺のプロセスくらいは知っていましたが、あんなつらい仕事を継ぎたいなんてまるで思いませんでしたね。朝3時に起きて、晩ごはんには寝落ちしているんですから(笑)そんな父が、ある時体調を崩して跡継ぎの話が持ち上がった。妻に相談したら「私なら継ぐね…」と。さらに、会社が休みの日に店番をしていると、なじみのお客さんが「なんであなたが継がないの!この麺をなくしちゃダメ!」とか仰る。それで腹を決めました。ところがいざ継いでみたら、今度は「親父には負けたくない…父を上回ってやろう」なんて気持が沸いてきたんです。そんなこと考えたせいでしょうかね、父は思いの外すぐに持ち直して、元気になって…結果、父 vs 息子の対決ですよ(笑)でも、ありがたいことに父は今も現役。それぞれにお互いの役割を考えながら一緒にやっています。

お父さまの教えと新たなご自身の挑戦とは?

最初、私が理解できたのは数値ばかりでした。でも父が教えてくるのは、すべて「こんな感じ…」なんです。つまり、毎日変化する様々な条件に応じて作り方変えるという勘や経験値、「職人技」を叩き込まれました。今はその基本の麺作りを踏まえつつ既存の枠にとらわれないものも作ってみようと思っています。例えば「手延べ純抹茶そうめん」などは、私が手がけて商品化にこぎつけましたが、完成までにどれだけ試作して捨てたことか…一般企業なら開発コストだけでクビですよ。他にも、麺にクラシック音楽聞かせてみたりもしました。結果、数値としてはコシが 1.2倍くらいになっていたんですけど、お得意様方に試食してもらったら違いを感じた人は、たったふたり…で、やめましたけど(笑)でも、やはりこの麺をみなさんに知ってもらえるよう挑戦はし続けたい。「半生戻し麺」も、よりおいしく、安全・安定的に生産できるように改良しています。

看板商品「半生戻し麺」について

この辺りでは、夏場、夕方になると海の方から湿った風が吹いてきます。それで一旦乾いた麺が再び湿ることで、他の麺にはみられない「戻し」という特徴的なプロセスが加わった、この地域特有の麺になりました。この製法について発祥の記録は残っていないのですが、江戸時代から続いていることは確かです。電気がない時代のこと、天日干ししてた麺が偶然にそうなって、食べてみたらおいしかった…ということではないかと想像しています。

現在は生産性や衛生面なども考慮して、室内でその風を再現して「戻し」の作業をしています。

半生麺と半生戻し麺の違いは?

 一般的にいういわゆる「半生麺」は、生地を練ってから乾麺になる手前で手打ちした半生麺のことです。当地の半生麺は、一旦乾燥させてから再度戻した「半生戻し麺」。どうせ戻るんだから、わざわざ乾麺にしなきゃいい、とよくいわれますが、それがそうでもないんですよねぇ。茹でると、ふわっとやわらかいのにしっかりとコシがある…“口の中で踊る”という感じでしょうか。また「戻し」の工程を経ることによって、さらに熟成がプラスされて旨みや香りも深くなっていると感じます。特に麺の「コシ」は日本独特といってもいいおいしさの感覚。その正体は小麦と塩水を練ることで形成される「グルテン」なのですが、「手延べ」はグルテンの組織を断ち切ることなく撚りながら延ばすため、どんなに細い麺にしても、長い時間茹でても、しっかりコシが残るのです。

〈たつみ製麺〉のこだわり

一般的な手延べ麺が 13 工程程度なのに対し、当社では30工程以上の手間ひまをかけて製造しています。それは、本当に細かいことの積み重ねです。いわば、ひとつの大きな工程を 1 とするならば、それにうちでは0.1 の手間をプラスしていくという感じでしょうか。それを全工程に課していくので、結果、倍以上の手間がかかります。とにかく愚直に、誠実に、楽せずやるだけですね。

また、今回ご紹介する「そうめん」と「ひやむぎ」も、日本農林規格(JAS 法)の定義上は、麺の太さ(厚さ・幅)の差なので、生地は同じ場合もよくあるのですが、当社ではそれぞれにおいしさの個性を味わっていただけるよう、小麦の配合や製法も変えて作っています。

神本家ならではの麺レシピはありますか?

うちの子たちなんか、小さい頃そうめんは何も付けずに食べてましたけど(笑)。昔、私が子どもの頃、この辺りでは八丁味噌の酢味噌で食べていましたね。(子どもの口には到底合わず、僕は食べられませんでしたが…)。あと今でも残っているのは(鰹ではなく)しいたけの戻し汁でつゆを作ります。現在、わが家のオススメはひやむぎで作る「和風カルボナーラ」。コレ、もちもちでホントにおいしいんです。それと、そうめんの冷製パスタ。ちょっとイタリアン風で食欲のない夏場におすすめです!

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