- iiwan 豊栄工業について
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愛知県新城市郊外の緑豊かな地で、金型設計をはじめ、精密部品や医療機器などまで、高い技術力で金属加工や精密機器製造を手がける「豊栄工業」。その本社に隣接する、真っ白なかべに親子のイラストが描かれた建物。ここから、ベビーにはもちろんママやパパ、さらに地球にも安全でやさしいバイオプラスチックの離乳食用食器「iiwan(いいわん)」が発信されています。
「サーラのおすすめ」特集の
匠インタビューをご紹介いたします。
モノ作りの会社がゼロから作りあげた、バイオプラスチック素材のベビー用食器「iiwan」。
子どものはじめての体験を最高のものにする”というコンセプトに込めた想いを、ブランド責任者の美和敬一さんと、販売企画チーフの近田佳乃子さんにうかがいました。
愛知県新城市郊外の緑豊かな地で、金型設計をはじめ、精密部品や医療機器などまで、高い技術力で金属加工や精密機器製造を手がける「豊栄工業」。その本社に隣接する、真っ白なかべに親子のイラストが描かれた建物。ここから、ベビーにはもちろんママやパパ、さらに地球にも安全でやさしいバイオプラスチックの離乳食用食器「iiwan(いいわん)」が発信されています。
「ポリ乳酸」とは、とうもろこしなどのでんぷんを原料に、乳酸を使った化学的なプロセスを経て作られる樹脂のことで、一般的な石油系プラスチックとは成分がまったく異なる植物由来の樹脂です。
二酸化炭素の排出量を抑制し、環境負荷が低いカーボンニュートラルな素材で、日本ではまだあまり知られていないかもしれませんが、海外ではすでにスタンダードになりつつあります。実は、素材そのものは40年ほど前から話題にはなっていましたが、医療などごく一部の分野で使われているのみでした。それがプラスチック汚染が地球規模の問題となり、改めてスポットが当たり、日本では2005年の「愛・地球博」(愛知万博)でポリ乳酸製の食器が発表されました。
そこで、わが社では2007年よりポリ乳酸に特化した世界的な技術顧問の方に入っていただき、数年間の共同研究開発を経て特殊な金型を開発。それが「耐熱性ポリ乳酸」を使った「iiwan」の商品開発へとつながっていったのです。
「iiwan」を開発するきっかけは、今の副社長で私の兄にあたる美和敬弘が、2010年当時、これから離乳食の時期に入るわが子のための食器として、なかなかコレというものがみつからない。じゃぁ、うちで作ればいいんじゃないか…というひと声でした。
そこでプロジェクトを立ちあげ、まずはプロダクトデザイナーの方に設計を相談してみましたら、そのデザイナーさんにもちょうど小さなお子さんがいて、非常に興味を持って取り組んでくださって。ご提案くださったデザインはすでに完成度の高いものでした。
ネーミングは兄の発案ですが、当初社内ではエコの「e」を付けたewanと表記していました。でも、エコの目的だけではなく、“いいもの”をつくりたかったという意図もあり、「e」を「ii」に変えて決定。さらにパッケージを依頼し、サイトも立ちあげ、ひとまず販売できる形が整いました。
初お披露目は同年12月の「エコプロダクツ」(毎年12月に東京で開催される環境配慮型製品・サービスに関する展示会)です。ここで高い評価を得て、翌年の2011年4月には「グッドデザイン賞」も受賞。ただ、我々はあくまでも製造業なので、良いモノを作りさえすれば売れると思っていたんです。実際には、商品開発から先の、宣伝や売り先の開拓の方がずっと大変でした。
とはいえ、四苦八苦しながらも翌年2012年には、パリの「メゾン・エ・オブジェ」(インテリア界では世界最大級の国際展示会)にも出展。そこでも確かな評価を得たことで、2012年4月に大手セレクトショップ「BEAMS」の採用が決まり、ついに東京初進出を果たしました。そこからは販売先も一気に拡大しましたね。
ただ、当時は“素材の安全性”をメインで打ち出していたので、他との明確な差別化としてはイマイチ弱かった。そこで、また専門家のチカラを借りながら2015年にブランディングに改めて着手、現在の『子どものはじめての体験を最高のものにする』というコンセプトが完成し、パッケージなどもリニューアルして今に至ります。
わが子に本当に使わせたいもの、大切な方のベビーに贈りたいもの、それがプロジェクト発足から一切ぶれることのないiiwanに込めた想いです。
iiwanの食器は、子ども自身が上手に食べられるカタチを重視しています。具体的には、スプーンやフォークの柄は、赤ちゃんがパッと握れるようにアーチ状に、口に運ぶまで食べものが落ちにくいように先端はキュッと上向きにしてあります。おちゃわんやカップにはすべて持ち手が、しかも低い位置に付いています。
他にも、少し外側に反ったカップの縁、おちゃわんの持ち手の裏の小さな突起、最後のひと匙まですくいやすい器の底に角のない曲面仕上げ。さらに、離乳食用スプーンは、おとなの手にフィットする独特な形状と、小さな口に入れやすいように先端を薄く仕上げてあるなど、細かいこだわりが凝縮しています。
また、原料の段階から着色するので一切のコーティングもなく、金型の合わせ目に生じる“バリ”はていねいに手作業で取り除いています。金型に特殊な加工を施して、表面はサラサラでマットに汚れがつきにくく仕上げています。樹脂製のわりには陶器のような厚みと、若干の重みもありますが、それも特徴の一部である高級感や安定感につながっていると思います。
イエロー、ホワイト、ピンク、ブルー、グリーンの5つのカラーには、子どもの未来への願いを込めたネーミングと短いコンセプトを添えました。離乳食スプーンは“ママの卒乳祝い”というイメージで、卒業証書のようなパッケージが人気です。赤ちゃんがおっぱいを卒業して自分でできることが増えていくのは、うれしい反面、どこかさびしさもあるものですよね。そんなママに、お疲れさまの意味も込めています。
子育てって、しあわせな部分だけを切り取られがちですが、実際には、特に離乳食の時期って、保護者の方々、中でもママの負担が大きくなる時期だと思うんです。実際、産後うつや産後クライシスなどつらい状況に陥る方も多い。そんな社会的な課題に、iiwanを通してなにかアプローチできないか…そんな想いからスタートしたのが「iiwan OYAKO PROJECT」です。
今のところ、イベントやコンテンツの発信が主な活動ですが、中でも乳児院を訪問し、そこでiiwanを使っていただき寄贈するという機会を何度か設けていただきました。その活動報告をサイトに上げたり、離乳食期を迎えるご家族に「MY FIRST BOOK」という冊子をプレゼントしたりしています。
実際に現場でお話しをうかがうと、育児ってパートナーや家族の理解・サポートが本当に重要だなと実感することが多いんですね。もし、もっと早くにお互いが育児について思っていることを話せていたら、ママはもっと上手に手抜きもできて、パパはもっと上手にママの役に立つことができたかも…、もっと前向きに子育て期を乗り越えられたのではないか…など。もちろんiiwanの食器を使えばそれを解決できるわけではないのですが。本格的に心も体も病んでしまう前に、小さな会話のきっかけ作りになれたらいいなと。ですので、これはママの意見だけではなく、パパ目線のアイデアなども載っていて、その中にはかなりリアルで若干厳しめの意見もそのまま載せています。出産直後のお祝いでiiwanが届いて、入っていたブックをパラパラめくって、何気なくした夫婦の会話が、その後の育児を乗り切れる小さなきっかけになれたら、との想いを込めています。
少し専門的な話にはなりますが、実は、ポリ乳酸というのは非常に成型加工が難しい素材で、生産性を高めつつ耐熱性・耐久性を保持するには、通常の金型では不可能でした。
我々は、その条件をクリアできる特殊な金型の開発に成功して特許も取得。2017年には「文部科学大臣表彰 科学技術省(技術部門)」と、さらに「経済産業省 第7回ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞」も受賞!1年間でこのようなダブル受賞は史上初といわれています。
このように、こだわり抜いた素材と技術の研究開発から製品化、販売までの長い道のりも、社会的な課題や未来への間接的な取り組みである「OYAKO PROJECT」も、これは当社の内部、身近な声から始まったものだから実現できていることかもしれません。iiwanは我々が愛情と自信を持っておすすめする、安全とやさしさに満ちた“いいもの”なんです。